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by M・プリオール

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映画は無力か?それとも…
2002年5月26日(日曜日) : : コメント数(360)

前回のコラムで書いたような問題に対して、映画っては悲しいほど無力だ。映画を見る観客は、そこに現実を求めてはいない。約2時間の別世界を楽しむ。別世界で得られた物は、そのまま別世界に置いていく観客もいる。別世界で得た物を現実社会に当てはめようとするも、現実の大きな流れに適応できないことを後に理解する観客もいる。自然が大事だと分かっていても、そのメッセージを実行するには制約条件が多すぎ、あの主人公に憧れると思いながらも、主人公のように生きるには制約条件が多すぎる。

ただ、頭をひねるならば映画でも何かを変えられるはずだ。

しかし、大人にメッセージを伝えるのには、映画ってのは極めて無力といわざるを得ない。大人は絵空事を自分の人生に適応できる環境に乏しい。絶えず現実社会に対面し、責任を求められ、自らの役目を果たさなければ、社会で生き延びていくことが出来ないからだ。大人がだめなら、それなら、子供は?

心理学の研究で、子供までに見た映画やテレビが、大人になった時のヒーロー像に密接に関係しているという成果が発表されている。今までで最も好きな映画(何回も見た映画)に、思春期に見た映画を上げる人がとても多い。ある程度の責任しか求められず、学ぶことに長け、感じ、考え、価値観に最も揺らぎのある子供に訴えるなら、もしや映画ってのも力強いメッセージを伝えることが出きるのかもしれない。エンターテイメントや物語の枠を超えて、自分の人生に適用しようとし、それを実現してしまうかもしれない。

映画で戦争の悲惨さを訴えたい方は多い。ただ、だから我々大人に何ができるんだ?そしてそれは現実社会で、自分の人生を歩みながら可能か?我々は今後戦争をなくすために、自分の現在の人生を維持しつつ、その与えられたメッセージを自分に適用することができるのか?自分の人生を破壊せずに、その映画を見た後、戦争撲滅のために動く事は可能だろうか?I think 否。それは難しい。『戦争は悲惨だ』『戦争はしちゃだめだ』なんていう陳腐なメッセージを日本の大人に訴えることが目的であり、行動は望んではいない、と言うならば、それは大人をバカにした『語る必要もない自己思想』としか言えない。

ただ、その同じメッセージでも子供に対するものは全く違ったインパクトを持つ。知識と経験に乏しい子供には、同一のメッセージでも、鋭い訴求力を持つ。だから、さっき俺っちが言った“日本人をバカにした『語る必要もない自己思想』”ってのは、ひとたび対子供になると『語る必要のある貴重な思想』になると思うんだ。

ただ、子供は理解できる物と理解できないものがある。理解したくてもできない物や、理解なんてしたくない物がある。さっきも言ったが、子供は知識も経験も乏しい。その子供に、先生が上から怒鳴るような、親が説教をするような方法で伝えたところで、どんなにそのメッセージが優れていようと、どんなに素晴らしい考えであろうと、徒労に終わる可能性が高い。

子供には子供が理解できる方法で伝えなければならない。その1つの方法に、俺っちはアニメーションを選んだわけだ。

同じメッセージでも、親が言うのと大好きなキャラクターが言うのとは、子供にとって全く違うことであると言える。戦争映画で兵が死ぬより、アニメーションで好きなキャラクターが苛められているほうが子供にとっては大事件であることもある。かじりつくような態度で、全ての意識を集中させ、絵と物語を追う子供こそ、良くも悪くも映画が絶大な影響を与え得る唯一の観客だ。

小学校の時、大人の社会になんぞ興味はなかった。それは今の小学生も同じだろう。つまり、大人社会で起こっている事件は、子供には『無関係』なのさ。どんな悲惨な戦争映画を見せようとも、小学校の俺っちには『蛍の墓』以上に、不戦の価値観を形作った映画はない。小学校の俺っちには『トトロ』以上に、田舎で暮らしたいと思わせた映画はなかった。子供は子供の世界で暮らしていて、その子供の世界へ上手にリンクできるのは映画で言えばアニメーションだと思うんだ。

こんなことを言えば、映画制作者の方や映画留学生の方に大批判されるだろう。ただ、やはり大人は、映画は重要なメッセージをくれようとも、そのメッセージを適用できる環境には乏しい。適用できるのは子供だ。そして子供は、難しい映画なんて理解できやしないし、見たいとも思わない。ならば子供が見たいと思い、理解できる媒体を利用したアニメーションこそメッセージを伝えるのに相応しい物だ。無力だと思われた映画の中でも素晴らしく力強い訴求力を持つことができるのは、アニメーションだ、と俺っちは思う。

俺っちはアニメーションなら何かができるかもしれないと思う。

ドラッカーは言った。
『本当に知られるに値することは、人を素晴らしい人に変えることである。』
と。

映画製作者として働くからには、少しでも多くの人にいいメッセージを伝えたいと思う。

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